うちもそれなりに、家族で旅行をする。母方の実家やら、伊豆の温泉やらへ行くわけです。その間、猫はどうするかと言うと、家でお留守番。1日ぐらいなら、もともと単独行動を好む猫にはへっちゃらなんだそうな。
1泊旅行から帰ってきた。ようやく電車で帰ってきたときは、もう日もとっぷりと暮れていた。父と母は歩くの遅い。俺と姉は小走りに帰ってきたので、鍵の掛かった玄関の前でまだかまだかと両親を待つ。
「にゃーお」ミミがドアの内側から鳴いている。
「ミミただいまー」「にゃーお」「今開けるからねー」「にゃーお」
1日ぶりの再会はもうすぐです。
「ミミただいまー」「にゃーお」「今開けるからねー」「にゃーお」
1日ぶりの再会はもうすぐです。
しかし父も母もなかなか来ない。業を煮やした俺は、鍵の掛かったドアノブを見つめて、閃いた。この鍵を開けることが出来るかもしれない!空き巣がいとも簡単に鍵を開けていたのを思い出したのである。テレビドラマで確かに見たのである。確かあれは、棒のようなものを使っていた。
俺は棒を探した。発見。枯れ木の枝だ。まさしく、まがうことなき、これこそ、ドラマで見た棒のようなものだ。俺は機転の利く自分に酔いしれた。「ミミ、今開けるからなー!」
鍵穴に枯れ木の枝をグイグイと差し込む。入った。よし、これを回せば鍵が開くぞ!俺ってなんて天才なのだろうか。父と母もこれを知ったら、きっとビックリするだろうな。傍らで見ている姉も、きっと俺を尊敬するだろう。へへへ。
ボキ
あれ?折れちゃった。折れた枝の破片は、鍵穴の奥深くに食い込んだまま出てこない。えっと、これは何かの間違いで事故なので、見なかったことにしよう。父と母がやっと帰ってきた。鍵を開けてくれたまへ。しかし当然、鍵は鍵穴に入らない。
「何か詰まってる?」母はいぶかしんだ。ええ、おそらく何か詰まっていますが、きっと自然に詰まったのでしょう。気になさらないでください。
その時、姉が俺を名指してこう言った。
その時、姉が俺を名指してこう言った。
「木の棒入れちゃったよ」
な、なんて正直者なのだこの人は。その後かなり怒られましたとも。すごく泣いた記憶がある。
枝の破片はどうしても取れない。鍵屋さんに来てもらった。だが鍵屋さんにも取れない。その間、ずーっとドアの内側で「にゃーにゃー」と鳴いている。
「どうして入ってこないの?外で何やってるの?」と言っているようだ。
「ああ、可哀相に、どうしようどうしよう」と母はオロオロした。
「ミミ待っててねー、待っててねー」と答えるしかなかった。
「ああ、可哀相に、どうしようどうしよう」と母はオロオロした。
「ミミ待っててねー、待っててねー」と答えるしかなかった。
鍵屋のおじさんは「ここで諦めてはプロがすたる」と思ったかどうかは知らないが、機転を利かせた。家の周りをぐるっと確かめて、トイレの小窓が開くことを発見したのである。この小さな窓から入れるのは、俺しかいない。窓に取り付けられた、侵入除けのサッシを取り払い、小さな窓からようやく家の中に入ることが出来たのは、夜もだいぶ更けてから。
「にゃー」飛び掛らんばかりに体を摺り寄せてくる。しっかり抱きしめて、内側からドアの鍵を開けた。「ミミ、ただいまー」「にゃー」
やはり単独行動を好むと言っても、限度があるのだ。