ミミの思い出 EP4 – ただいま、おかえりなさい

うちもそれなりに、家族で旅行をする。母方の実家やら、伊豆の温泉やらへ行くわけです。その間、猫はどうするかと言うと、家でお留守番。1日ぐらいなら、もともと単独行動を好む猫にはへっちゃらなんだそうな。
 
1泊旅行から帰ってきた。ようやく電車で帰ってきたときは、もう日もとっぷりと暮れていた。父と母は歩くの遅い。俺と姉は小走りに帰ってきたので、鍵の掛かった玄関の前でまだかまだかと両親を待つ。
 
「にゃーお」ミミがドアの内側から鳴いている。
「ミミただいまー」「にゃーお」「今開けるからねー」「にゃーお」
1日ぶりの再会はもうすぐです。
 
しかし父も母もなかなか来ない。業を煮やした俺は、鍵の掛かったドアノブを見つめて、閃いた。この鍵を開けることが出来るかもしれない!空き巣がいとも簡単に鍵を開けていたのを思い出したのである。テレビドラマで確かに見たのである。確かあれは、棒のようなものを使っていた。
 
俺は棒を探した。発見。枯れ木の枝だ。まさしく、まがうことなき、これこそ、ドラマで見た棒のようなものだ。俺は機転の利く自分に酔いしれた。「ミミ、今開けるからなー!」
 
鍵穴に枯れ木の枝をグイグイと差し込む。入った。よし、これを回せば鍵が開くぞ!俺ってなんて天才なのだろうか。父と母もこれを知ったら、きっとビックリするだろうな。傍らで見ている姉も、きっと俺を尊敬するだろう。へへへ。
 
ボキ
 
あれ?折れちゃった。折れた枝の破片は、鍵穴の奥深くに食い込んだまま出てこない。えっと、これは何かの間違いで事故なので、見なかったことにしよう。父と母がやっと帰ってきた。鍵を開けてくれたまへ。しかし当然、鍵は鍵穴に入らない。
「何か詰まってる?」母はいぶかしんだ。ええ、おそらく何か詰まっていますが、きっと自然に詰まったのでしょう。気になさらないでください。
その時、姉が俺を名指してこう言った。
「木の棒入れちゃったよ」
な、なんて正直者なのだこの人は。その後かなり怒られましたとも。すごく泣いた記憶がある。
 
枝の破片はどうしても取れない。鍵屋さんに来てもらった。だが鍵屋さんにも取れない。その間、ずーっとドアの内側で「にゃーにゃー」と鳴いている。
「どうして入ってこないの?外で何やってるの?」と言っているようだ。
「ああ、可哀相に、どうしようどうしよう」と母はオロオロした。
「ミミ待っててねー、待っててねー」と答えるしかなかった。
 
鍵屋のおじさんは「ここで諦めてはプロがすたる」と思ったかどうかは知らないが、機転を利かせた。家の周りをぐるっと確かめて、トイレの小窓が開くことを発見したのである。この小さな窓から入れるのは、俺しかいない。窓に取り付けられた、侵入除けのサッシを取り払い、小さな窓からようやく家の中に入ることが出来たのは、夜もだいぶ更けてから。
 
「にゃー」飛び掛らんばかりに体を摺り寄せてくる。しっかり抱きしめて、内側からドアの鍵を開けた。「ミミ、ただいまー」「にゃー」
 
やはり単独行動を好むと言っても、限度があるのだ。
 
 

ミミの思い出 EP3 – ミミの攻撃。レベルが上がった。

小学生の頃住んでた家の庭には、いろんな生き物がいた。昆虫や爬虫類が生活していて、ミミはその庭でよく遊んだ。飼い猫と言えど、猫はやっぱりハンター。トカゲを捕まえるのはお手のもの。難なくミミは経験値1を獲得した。でもトカゲぐらいなら、俺も負けずによく捕獲できたものだ。
 
さすがにこれがネズミとなると負ける。人間が捕獲できるとは思えない。部屋にいると、ミミがネズミを咥えてやってきた。おいおい、これは俺に誉めて欲しいのか?流石だな。ミミは経験値5を獲得した。しかし、ネズミってよく見ると可愛い顔してるな。俺はネズミの墓を庭に作ってやった。俺の穴掘りスキルが5上がった。
 
ある日、家に帰ると玄関前に蛇がいた。結構大きいやつだ。こ、これはやばい、入れない・・・。そこに救世主が現れた。ミミだ。しかし、ネズミとは訳が違う。大丈夫なのだろうか?
 
蛇の攻撃。ニョロニョロー!ミミの攻撃。猫パンチ!猫パンチ!猫パンチ!!フギャーウギャーニャギャー!・・・蛇は逃げ出した。経験値10獲得、ミミのレベルが上がった。
 
つ、強い・・・。
 

ミミの思い出 EP2 – どこいった

数年後、引越しすることになった。引越し騒ぎで逃げ出さないよう、ミミの首に紐を付けてみた。完璧だね。
 
 荷物も全てトラックに積んで、さあ出発だ。ミミ行くぞ!あ、あーっ、そんなに引っ張らないで!紐が首に食い込んじゃうよっ!手を離した・・・。ああ・・・、手を離してしまった。
 
探したけど、もう時間がなくなった。千葉から埼玉へ。引越しのおじさん、すごく慰めてくれてたな。ずっと泣きっ放しな俺だった。
 
いなくなってしまったミミ。ぽっかりと穴が開いてしまった、そんな毎日。ある日、電話が掛かってきた。「夜になると猫がずっと鳴いてるよ」。千葉のときの御近所さんからだった。いたー!
 
父が帰ってきた。紙袋を提げて。中には食べかけのハムソーセージと、首に紐が繋がったままのミミ。父が電車で迎えに行って来てくれたのだ。帰ってきたー!
 
紐が取れない・・・。すごい食い込んでる。変な結び方で、引っ張ると首がどんどん締まっていく。「こんな結び方じゃ駄目でしょ!」。母に怒られた。
 
未だに紐を結ぶのは苦手だ。
 

ミミの想い出 EP1 – 我が家に猫がやってきた

もう記憶も断片的にしかない、小学校1年坊の秋の日。学校から帰ってくると、家の中に子猫がいた。母曰く、道を歩いていると、車が近寄り、窓越しに声を掛けられた。「この子かわいいでしょ」。それがこの猫だった。「かわいいですね」。答えると、猫を置いて車は走り去ってしまったそうだ。

黒白の模様がハッキリとしたブチネコさん。ぴっちり真ん中分けの、髪型のようなブチ模様。その絶妙な髪型模様も相まって、とっても可愛く美人なネコさん。でも怯えて怯えて、狭い隙間に潜ったまま夜まで出てこなかった。

夜になり父が帰ってきた。「なんだ犬じゃないのか」。どうやら父は犬派だったようだ。でも、もう姉も俺も飼う気まんまん。母は昔飼った経験があるからと、仕方なくも飼うことになった。

それから、姉と俺とで名前を考える。名付け合い合戦。落書き帳に思いのままの名前を書き出す。俺が考え抜いた名前は、どんなだっけ。記憶に無いが、多分、他愛も無い「チビちゃん」とかそんなだったかも。その中で姉が出した「ミミ」。俺は驚愕したね。愛くるしさ、可愛らしさ、ミーミー鳴くその情景、それらがなんとも溢れ出るような「ミミ」。負けた。
 
 
 
WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう